Toxic・Romance


 ……気持ちいい。

 触れられた場所に神経が移動し、思考がトロトロに溶かされていく感覚。心臓が耳の裏側に張り付いたように、鼓動がうるさい。

 視界が、ゆらゆらと廻る感覚。

 馨さんの指先が、私のスカートのホックに触れた。くらくらするほどの甘い香りで充満するシーツの上で、私の身体が、私の知らない感覚で塗りつぶされていく。

 気持ちいい、のに、なんだか……。

 快楽では収まらない、違和感が喉の奥を圧迫する。

「か、たぎりさん、まっ、て、本当に待って」

「どうした」

 返事をする余裕もなく、私はただ口を両手で押さえ込み、彼のシャツを必死で掴んではふるふると首を横に振る。

「は?……まじか」

 片桐さんはなにかを悟ったらしい。

 ──……それからは、まあ、悲惨だった。

「ごめんなさい、ごめんなさい、本当にごめんなさい!!!」

 ベッドの上で平伏する私と、ベッド脇に腰掛ける片桐さん。

「……勝手に酒は強いのかと思ってたけど、逆か」

「そうです、ごめんなさい」

 力いっぱい謝罪すると、片桐さんは盛大なため息を吐き出した。

 ……さいあくだ。
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