Toxic・Romance
胃のあたりの不快感はまだ澱のように残っているけれど、吐き出したおかげで思考回路はいくぶんクリアになっていた。
あれから、私は片桐さんに文字通り担がれるようにしてトイレまで運ばれた。それまで我慢できたのは、不幸中の幸いと言うべきか。けれど、年頃の女性であれば一生隠し通したいような無様な姿を、彼は余すところなく見届け、そのすべてを甲斐甲斐しく世話されてしまった。
「(……もう、お嫁にいけない……!!)」
おかげでベッドの上の大惨事という事態だけは免れたものの、私という個人の尊厳は、プリンスホテルの排水口へと虚しく吸い込まれていった。
「あ、あの、つづきは……」
真っ白な枕を抱え、ベッドの上で正座したまま、彼の背中に伺うように問いかける。
「萎えた」
「……な、萎えた!?」
聞いたことも、ましてや自分に向けられたこともないネガティブな単語の意味を、私は必死に咀嚼した。
「それはその、私に女性としての魅力がないということですか」
しかし、片桐さんからの返事はない。シーンとした空気と、低く唸る空調の音だけが私の虚しさを加速させる。
「(無視された!? 目の前にいるのに、無視された!!)」
度重なるショックで、今度こそ眩暈がしそうだった。