Toxic・Romance

 周囲の女性たちが、遠巻きに、まさに王子様を崇めるような視線を送っている。私も一介のギャラリーであれば、彼に羨望のまなざしを送っていたに違いない。

 見るだけなら一級品。無加工、ノーメイクでそのビジュアルははっきり言って罪だ。

 罪状:めろい男。として逮捕されてもおかしくない。

「おはようございます。偶然ですね」

「そうだね」

 片桐さんは無機質な表情を浮かべたまま、欠伸を噛み殺した。

「なんか疲れてません?」

「あー、金曜の疲れが残ってるのかな」

 金曜、というワードに彼の性格の悪さが詰め込まれている。

 どうせ昨夜も美女を侍らせていたにちがいない。もしも本当に、金曜の疲れが残っていたとすれば温泉宿泊券でもお送りしたい。

「ホワイトモカ、ショット追加、ホイップ多めでございます」

 そんなことを考えていると、不意に誰かの注文が呼ばれた。

 カウンターに置かれたのはもこもこのホイップクリームがこれでもかと盛られた、見るからに甘ったるそうなカップだった。朝から重たいものを飲める人がいるんだ……と、自分にはない鋼鉄の消化器官を羨ましく思っていれば、片桐さんは何事もなくそれを受け取った。
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