Toxic・Romance


 分かりやすく形容するならば、王子のような見た目の男性が、砂糖の塊みたいな飲み物を手にしている。塩対応搭載な人なのに。
 そのあまりに不釣り合いな光景に、私は自分の注文を受け取るのを忘れ、ぽかんと口を開けて凝視してしまった。

 片桐さんはタブレットを脇に抱えるように持ち直し、空っぽの手にもドリンクを持った。

「これ月島さんのじゃないの?」

「あ、そうです。そうですよ、あれ?片桐さん?」

 片桐さんは私にドリンクを渡す素振りもみせず、そのまま踵を返すと店を出た。

「(え!?カフェラテ強盗!?)」

 ひったくられている状況なので、私もあわてて後を追う。

「あの、片桐さん、私の……!」

「つか、体調戻った?」

 それは金曜の粗相を示唆する言葉だった。片桐さんは私にソイラテを差し出すので、両手で受け取る。

「おかげさまで、ぶじです……」

「そ。安心した」

 前を向いたまま、彼はやわっこい声を預けた。

「(全然、安心している態度ではない……)」

 そのまま、早朝のオフィス街を私たちは並んで歩く形になった。 端から見れば、王子さまと、後ろをちょこちょこと付いて歩く一般人。という構図だろうか。周囲の視線がすこし痛い。
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