Toxic・Romance
改めて見ても、綺麗な人だ。いったい何を食べて肌質を維持しているのか気になるし、どんな幼少期を過ごせば意地悪に成長するのだろう。参考のために聞きたい。
……負担になるかな?
秘密の共犯者は一体、何処まで踏み込むのを許してくれるのか。ボーダーラインが全くわからない。
見上げた。すぐに片桐さんと目が合って怯んだ。彼が私へ視線を移したのは果たして私とおなじだったのか、それとも彼の方が先だったのか、私はわからない。
静かに口を開いた。
「あの、本当に私のせいで疲れているわけじゃないですよね?」
理由を挙げるとすれば、結果的に彼との約束は果たされていない。私ばかり望みを叶えてもらって、彼にメリットがあるのか不安になったのだ。一応。
片桐さんは一瞬、面食らったように呆けた顔をして、それから硬くなったその表情が、徐々に綻んでゆくのをみた。
その瞬間、小鼻をむぎゅっとつままれてしまい、思い切り目を閉じた。おそるおそる目を開く。そこには、勝気で意地悪な笑顔で私を見下ろす片桐さんがいた。
「分不相応の仕事量を寄越す人間への心配ができて、月島さんはえらいね」
皮肉なはずの言葉が、なぜか甘く響く。 鼻をつままれたまま、私は真っ赤になって彼を睨み返した。
「……っ、もう絶対、心配なんてしません! 勝手に高血圧になって、倒れてください!」
勢いよく彼の手を振り払う。けれど、鼻先に残る彼の指の感触と、あの無防備に綻んだ笑顔の残像が頭から離れなかった。