Toxic・Romance
なんとなくだけど、あの人は心の底から悪い人じゃないのかもしれない。そう、片桐さんへの認識を改めたのに、昼休憩直前のオフィスで私は呆然とした。
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件名:修正指示
送信者:kaoru.katagiri@seiran-pr.co.jp
宛先:yuyu.tsukishima@aosync.co.jp
月島さん、
先週共有した案件のキャッチコピーですが、 方向性が全体的に甘い。
「恋」という言葉を多用しているだけ。ターゲット層の行動心理を再考し、より即物的な、切実さを伴う言葉を選定すること。
本日17時までに再案を30案提出し、間に合わない場合は、理由を添えて早急に連絡してください。
それと、共有事項が増えたので、週二回は当社制作ルームへ来ること。遅刻は認めない。
片桐
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人生は、まるで質の悪いRPGだ。レベルアップして、自分の身の丈にあった立ち回りや技を覚えて荒波を乗り越えてゆくものだ。
一体どんな経験値を積んだら、これほど完璧な塩対応を覚えられるんだろう。
彼はきっと、優しさというステータスをすべて効率と傲慢さに全振りしてここまで来たに違いない。
「(どこが優しい、どこが……!!!)」
17時までに30案、これはもう、鬼畜の所業である。