Toxic・Romance

「……っ、すみません、私はちょっと、関係ないので、というか関わりたくないので、失礼します!」

「このままだと役員の娘に捕まって俺の貴重なプライベートが死ぬ」

「いや、あの、聞いたら関係者になるじゃないですか! 巻き込まないでください!」

「どこかに良い代役、居ないかなあ?」

 わざとらしく周囲を見渡す彼に、私は全力で首を振った。

「わー!!!!! いませんよーー!!! どこにもいません!!!」

 耳を塞いで逃げ出したくなる私をよそに、片桐さんは満足げに目を細めた。そして、お姉さま方が見たら悲鳴を上げて卒倒するような、とびきり端正で、凶悪な王子様スマイルを浮かべる。

「……責任、取ってくれるよね?月島さん」

「うっ……嫌です、やだ!」

「じゃあ、金曜に」

 一方的にそう告げると、彼は私の鼻先で煙を一つ吐き出し、足をおろして悠然と喫煙所を後にした。

 一人残された私は、彼が置いていった吸い殻と、心臓の嫌な鼓動だけを抱えて立ち尽くす。

「……さいあく。……性格悪すぎ、あの人……!!」

 物語のスパイスどころか、彼はまるで劇物だ。
< 84 / 249 >

この作品をシェア

pagetop