Toxic・Romance
 つんとそっぽを向けば、片桐さんは首をこてんと傾けて顔を覗き込む。

「今日は飲みすぎるなよ」

 それはまるで、忠告の形をした確認だった。逃がす気がないと、私に教えているような。

 崩されている。何もかもを。取り込むつもりが取り込まれているような、そんな錯覚に陥る。

 悔しくて、無意味にフレアスカートを掴む。

「……分かってますよ。片桐さんは私に遠慮せずに、いつでも美女の呼び出しに応じてくださいね?」

「んー、でも浮気認定されるじゃん?」

「私たち、お付き合いしてる訳じゃないので浮気にはならないですよ」

 「俺を呼び出すような女といるより、月島さんといる方が楽しいと思うから、一緒にいるんじゃないの」

 不意に飛び出したキラーフレーズに、甘い言葉を聞き慣れていない私の頬は一瞬で熱が通った。

「………………そんなこと、ないですよ」

「何、聞こえない」

「そんなこと、ないですっ」

「あ、着いた。ほら、どうぞ」

 流れるようにレディファーストで入店を促され、一旦、戦闘中止だ。腹が減ってはいくさは出来ないもん。
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