Toxic・Romance
いくら最悪な人とは言え、彼チョイスのお店はセンスがいい。カウンター席に並んで座り、まずお酒を選んだ。今日は、梨のお酒にした。私は梨と桃がとても好きなのだ。
雰囲気のいいお店で、お気に入りの1軒になりそうな予感がする。ていうか既にお気に入りだ。
「片桐さんにこんな雰囲気のあるお店に連れてこられたら、爆美女だってすぐ落ちちゃうんでしょうね」
可愛いお酒を両手で囲いながら、嫌味を告げた。
「ここも悪くないけど、女を落とすなら別の店を選ぶよ」
「そっか、女性によってお店を選んで、変えるんですね」
納得させる私を見て、片桐さんは不意に私のサイドの後れ毛髪を掬って、耳に掛けた。
「ちなみに、自分も女性のひとりだって忘れてない?」
「え、」
視線が合う。逃げ場を与えない距離で、彼は薄く笑った。
「……顔、赤」
そう言って、彼は指先で自分の頬をなぞる仕草をする。触れていないのに、なぜだか触れられている気がした。
素敵なお店くらい、気兼ねなく楽しみたいものだ。
今度はぜひ、夜永さんと一緒に来店したい。だって、今もそう。片桐さんと一緒だと緊張してしかたがない。
向かい合えば視線が合わさる。隣に座ると肩が触れ合う。緊張するし、慣れない。これはきっと、ずっと私の頭を悩ませるのだろう。
だからきっと、この望みは片桐さんは叶えられない。