Toxic・Romance
「や、あの、待って」
「なあんで」
くすくすと笑いながら、片桐さんはおそらく人差し指で私の背中をするりと撫でた。そのたびに、びくんとからだが跳ねた。
「緊張、します」
「まあ……緊張してるってのは俺も同じかも」
片桐さんがぽつりとつぶやく。こんなふうに簡単に女を抱き寄せておいて緊張しているなんて信じない。
「(ぜったい、うそ)」
そのまま彼は、自由な方の手で私の顎を軽く持ち上げた。抵抗する間もなく、ついばむような、焦らすような、まるでお遊びのようなキスが降ってくる。
「んっ、」
唇が離れたかと思えば、またすぐに、別の場所に柔らかな感触が落ちる。一度、二度。まるで、真っ白な余白に、自分だけが知る特別な印を付けていくような。
唇を離すと、片桐さんは私の腰に腕を巻きつけて、私のからだをさらに引き寄せた。片桐さんの脚のあいだに私のからだはすっぽりと収まって、後ろから抱きすくめられているようなかたちになる。
はじまりを予感めく。どうしようもないほどに。
「ど、どう、したら」
情なくふるえる声をふりしぼると「んー?」と、片桐さんはゆるいあいづちを打った。
「どうしたら、いいですか」
「どうもしなくていいよ」
「……っえ?」
安心させるような声色が、かえって、私の不安を煽った。