一等星センセーション―日陰女子、イケメンアイドルになります!?―

「千景さん、もうそろそろ出ないといけない時間では?」


ピカピカにメンテナンスされたアイランドキッチンの向こう側から、優しく呼びかけられる。

青い企業ロゴの入ったエプロンを身につけた、60代くらいの女性――
この人は、ハウスキーパーの森田さん。

お兄ちゃんのことで忙しいお母さんの代わりに、ずっと家事や私の世話をしてくれている人だ。

たぶん、この家で一番、私の朝の時間を覚えてくれている。

「……あっ本当だ!ありがとう、森田さん」

朝食の食器をまとめて森田さんに手渡すと、急いでリビングから出て行こうとする。

ドアノブに手をかけて――ふと、振り返る。

お母さんの目は、変わらずお兄ちゃんに向いたまま。
ドアノブを握る手に、力がこもった。

「いってきます。――……」

……“お母さん”

そう言おうとした声が、喉の奥で詰まる。
まだそこまで強くはなれていないみたい。

見なかったことにするみたいに、私は家を飛び出した。

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