俺様辣腕社長の甘い執愛~マッチングアプリなんて信じません!~
「身の回りの人全員があなたと同じ価値観だと思わないで! 私、帰ります!」
「おいっ」

 結衣はくるりと向きを変え、呼び止める浩斗の声を無視して歩き出す。

 最高の食事を食べたはずなのに、気分は最低だった。

 帰り道の電車でシェアラからメッセージが届いていることに気付く。開くと、エンちゃんからだった。

【今日は楽しい時間を過ごせたかな?】

 画面の中のエンちゃんは楽しげだ。

【最低だった】

 結衣はそれだけ入力すると送信ボタンを押し、スマホのカバンに仕舞う。

(最低だったけど……あの人が今日のために時間を確保して、レストランの予約をしてご馳走してくれたのは事実なわけで──)

 言い過ぎたかもしれないと、今さら後悔が押し寄せる。
 ふと目線をずらすと、電車の開閉扉にシェアラのステッカー広告が貼られていた。

「はあ」

 思わずため息が漏れる。

「明日、会社行きたくない……」

 やっぱり転職しようかと迷うが、給料はそれなりにもらっているし、職場環境もいい。あの社長を除いて。
 結衣は重い足取りで、帰途についたのだった。

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