俺様辣腕社長の甘い執愛~マッチングアプリなんて信じません!~
 翌日。
 自席で淡々とメール対応をしていた結衣は、視界の端に映った影に顔をこわばらせた。

「よーこみーぞ先輩!」

 明るい声と共に現れたのは、今最も会いたくない人――智紀を寝取った後輩である前澤玲奈だ。「げっ」と喉まで出かかった声を、結衣は慌てて咳払いで飲み込んだ。

「前澤さん、おはよう。どうかした?」
「昨日の夜のことですけど──」

 その言葉に、結衣の心臓が飛び上がる。

(昨日の夜?)

 聞きたくない。そう思った結衣は咄嗟に立ち上がる。

「ごめん! このあと用事があったの忘れてた! またあとでね!」

 捲し立てるように早口で告げると、足早にその場から逃げ出す。

「ちょっと、先輩!」

 玲奈の呼びかけが聞こえたけれど、結衣は聞こえていないふりをした。

(よかった。逃げられた)

 どうにか玲奈を撒くことに成功してほっと息をつく間もなく、ポケットのスマホが震えた。

「ん? 課長?」

 結衣はすぐに電話に出る。

「23会議室に来てもらえるかな?」
「はい。わかりました」

 何の用だろうと首を傾げながらも、結衣は会議室へ向かう。
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