俺様辣腕社長の甘い執愛~マッチングアプリなんて信じません!~
 翌週、結衣は作戦通り、浩斗を自分のお気に入りの店に連れて行った。
 細い路地裏にはそこかしこに赤ちょうちんがぶら下がり、店の中の大きな笑い声が路地まで聞こえてくる。

「どこに行くんだ?」
「美味しくて、私のお気に入りのお店なんです」
「ふーん」

 浩斗は興味深げに周囲を見回す。
 あまりこういうところには来たことがないのだろう。戸惑っているのが伝わってきた。

「ここです!」

 結衣は一軒の居酒屋の前で立ち止まる。

 一軒屋の居酒屋で、通り沿いの軒下では酔っぱらったサラリーマンがワイワイと酒盛りをしている。店の壁に貼られたメニューは油汚れで黄ばんでおり、高級レストランとは対極をなすような庶民派居酒屋だ。

 びっくりした様子で店の看板を見上げる浩斗を見て、結衣はほくそ笑む。
 既に完全に出来上がったおっさんの合間をすり抜け、小さな二人掛けテーブルに案内された。
 浩斗は恐る恐る、テーブルに置かれていたラミネート加工されたメニュー表を眺めた。

(ふふっ、驚いている。どーよ! 庶民の味方、赤提灯居酒屋は!)

 まんまと浩斗に生活レベルと価値観の違いを見せつけることができたことで、結衣は達成感に浸る。
 このあとの流れが脳内再生された。

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