俺様辣腕社長の甘い執愛~マッチングアプリなんて信じません!~
 気のせいだろうか。なれない場所で頼りの先輩社員の態度が冷たいと、精神的にこたえる。

(田中さんも、もうすぐ休職だし……。頑張らないと)

 結衣は小さく振ると、気合を入れたのだった。



 その数時間後。大型オフィスビルの一室で、浩斗は取引先であるS商事の社長の挨拶を交わしていた。

「今日はありがとうございました」

 さわやかな笑みを浮かべ、浩斗は取引先の社長に向けて手を差し出す。
 ふたりは固い握手を交わした。
 オフィスビルの廊下を歩きながら、結衣は時計を確認する。時刻は六時だ。

(もうこんな時間……。早く会社に戻って、成瀬さんに言われた資料を作らないと)

 時計を見て、終わるだろうかと気分が重くなる。
 はあっとため息をついたタイミングで、ちらっと結衣を見た浩斗と目が合った。

「横溝さん、今日はずっと元気がないけど体調でも悪いのか?」
「え? 大丈夫です」
「じゃあ、お腹が空きすぎて元気がないのか」

 浩斗がからかうように言う。そのとき、成瀬がふたりの会話に割って入ってきた。

「私がさっき、厳しめに叱っちゃったんです。任せた資料が全然できてなくて」
< 92 / 255 >

この作品をシェア

pagetop