追放令嬢が可愛い犬を拾ったら実は狼の神獣でした〜なぜか気に入られて国を滅ぼしそうな勢いです〜
 大樹に大きく開いた穴、世界の入り口の前で、イリオはファシウスを見る。そして、ポンッとイリオは人の姿になり、口を開いた。

「お前は父親である国王を動かし俺を殺させようとした。だが、俺はこうしてエリスと出会い、もう一度力を得ることができた。神獣という存在が人々から忘れられているとしても、その存在が個体として在る無しでこの国の力のバランスに大きく影響を及ぼす。俺はこの世界からいなくなる。それはこの国から存在自体が無くなる、ということだ」

 風が吹いて、イリオの美しい白銀の髪の毛がサラサラと揺れる。サファイア色の瞳は、ファシウスをしっかりととらえて離さない。

「神獣という存在が無くなるということは、この国の衰退、果ては滅亡を意味する。お前も、国王も、この国も、すべて無くなるんだ。お前の居場所はどこにもない。せいぜい悔やんでも悔やみきれない思いを噛みしめて、数少ない残りの余生を生きるんだな」

 イリオはそう言うと、エリスの手を取って世界の入口へ足を運ぶ。エリスもイリオの後を追って、世界の入口へ足を踏み入れた。

 二人の姿が無くなったあと、レイヴンはファシウスを見てニヤリ、と笑うと、左手を前にして腹部に当て、右手は後ろに回し優雅にお辞儀をする。そしてレイヴンも世界の入り口へ足を進めた。

 レイヴンの姿が見えなくなると、世界の入り口はゆらゆらと揺れ、消えた。それと同時に、ファシウスを囲んでいたレイヴンの黒羽根も消える。

「あ、ああ、あああ……あああああ!」

 ファシウスの絶望の声だけが、森の中に鳴り響いた。

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