MR(医薬情報担当者)だって恋します!


「はいはい、タクシーがちゃんと送ってくれるから」

 鈴木は手を離そうとしない。

「ちょっと……」 

 仕方ないので一緒に乗った。

「らいたい、鈴木は平気らの?」

 鈴木は座った目を私に向けて言った。ろれつが回っていない。

「何が?」
「今日、先生に触られてた」

 鈴木、見てたんだ。

「あー、先生も酔ってたからね。肩ぐらい組むよね。そういうのは無視が一番だから」
「安売りすんらよ、も~」
「そうだね、はいはい」

 だったらさっきの鈴木のキスはなんなのよ!
 
 と一瞬思ったが、忘れようと頭を振った。

 鈴木は私に寄りかかったままうとうとしだした。私は仕方ないので放っておいた。

「ほら、着いたよ」

 私はまた鈴木を担ぐとアパート一階の鈴木の部屋のドアの前まで連れて行った。鈴木の肩を揺さぶったけど、反応がほとんどないので、鞄の中から鍵を探してドアを開けた。
 鈴木を玄関から続く廊下に横にならせる。

「まったく……。貸しだからね!」

 帰ろうとドアの方へ歩く。ところが足首を後ろから掴まれ、私は思いっきりこけた。

「い、痛っ! 鈴木、何なの!」

 と振り返ると、鈴木が覆いかぶさってきた。

「ち、ちょっと!」
「鈴木~」
「な、何よ?」

 鈴木は糸の切れた人形のようにばたんと私の上に倒れ、寝息をたてはじめた。
 今日はなんなんだろう。ドクターたちに体は触られ、鈴木にファーストキスは奪われ。

「鈴木最近変だったからなあ」

 私はもうジタバタする気も失せて、眠ってしまうことにした。
 鈴木は重くて、でも体温が高くて子供のようで、私は不思議と安心してほどなく眠りに落ちた。

< 106 / 238 >

この作品をシェア

pagetop