MR(医薬情報担当者)だって恋します!
「はいはい、タクシーがちゃんと送ってくれるから」
鈴木は手を離そうとしない。
「ちょっと……」
仕方ないので一緒に乗った。
「らいたい、鈴木は平気らの?」
鈴木は座った目を私に向けて言った。ろれつが回っていない。
「何が?」
「今日、先生に触られてた」
鈴木、見てたんだ。
「あー、先生も酔ってたからね。肩ぐらい組むよね。そういうのは無視が一番だから」
「安売りすんらよ、も~」
「そうだね、はいはい」
だったらさっきの鈴木のキスはなんなのよ!
と一瞬思ったが、忘れようと頭を振った。
鈴木は私に寄りかかったままうとうとしだした。私は仕方ないので放っておいた。
「ほら、着いたよ」
私はまた鈴木を担ぐとアパート一階の鈴木の部屋のドアの前まで連れて行った。鈴木の肩を揺さぶったけど、反応がほとんどないので、鞄の中から鍵を探してドアを開けた。
鈴木を玄関から続く廊下に横にならせる。
「まったく……。貸しだからね!」
帰ろうとドアの方へ歩く。ところが足首を後ろから掴まれ、私は思いっきりこけた。
「い、痛っ! 鈴木、何なの!」
と振り返ると、鈴木が覆いかぶさってきた。
「ち、ちょっと!」
「鈴木~」
「な、何よ?」
鈴木は糸の切れた人形のようにばたんと私の上に倒れ、寝息をたてはじめた。
今日はなんなんだろう。ドクターたちに体は触られ、鈴木にファーストキスは奪われ。
「鈴木最近変だったからなあ」
私はもうジタバタする気も失せて、眠ってしまうことにした。
鈴木は重くて、でも体温が高くて子供のようで、私は不思議と安心してほどなく眠りに落ちた。