MR(医薬情報担当者)だって恋します!


 私はしばらく沢野先生の部屋を訪れるのをやめた。
 循環器内科の医局に行かないわけにはいかないので、短時間で用を済ませて出る。3階のエレベーターホールには一人で立たない。なるべく沢野先生に会わないよう工夫した。

「鈴木」
「あ、うん。何?」
「何って、こないだからボーッとして、どうしたんだよ? ちょっと前までは調子良さそうにしてたのに」

 鈴木は本気で心配してくれてるようだった。
 複雑な気分になる。
 沢野先生のキス。私を悩ませてるもの。
 でも鈴木のキスも悩みの一つなのに。
 酔ってて覚えてないから仕方ないとは思う。でもやっぱり複雑。

「鈴木? 俺の顔に何かついてる?」
「唇がついてる」
「はあ? ほんと大丈夫か?」
「あんまり大丈夫じゃないけど、相談することでもないの」
「なら、聞けないけど……。言って楽になることあったら言えよな。俺はケリついたし」
「ありがとう」

 鈴木が酔ってキスしてきたからって言ったらどんな反応するのかな? 彼女のこともあるし、鈴木も悩んじゃうだろうな。それなら言わずに私が悶々としとくしかない。
 沢野先生のことはもちろん相談なんてできないし。
 でも、営業に影響出るようじゃだめだよね。気を入れてやらないと。
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