MR(医薬情報担当者)だって恋します!
「あ、あのっ!」
私は身をよじるが、沢野先生の力は意外と強いものだった。沢野先生は私を抱きしめたまま言った。
「好きなんです。貴女が、鈴木さん」
「?!」
沢野先生は身体を一度離すと、かがんで今度は私の頬を両手のひらで挟むように包み込んだ。目の前に沢野先生の目がある。
「あの……」
逃げなければいけないとは思った。でも沢野先生の私を見る目の真剣さに、私は動けなくなってしまった。
「好きです」
沢野先生ははっきりとそう言うと、私にくちづけた。先日のキスとはまるで違う。唇を柔らかく何度も食まれて私は思わず口を開けてしまった。沢野先生の舌が私の口の中に入り込み、ゆっくりと歯を舐めた後私の舌に絡みつく。私は力が抜けてバランスを崩した。慌てて沢野先生が私を受けとめる。ぼうっとする頭で沢野先生を見つめると、沢野先生は私に手を差し伸べて、私を起こした。そして言った。
「結婚してくれませんか?」
「はい?」
私の声が裏返った。
現実感がなくふわふわする。
「私と結婚して頂けませんか? 困らせているのは分かっています。でも、考えて頂けませんか?」
戸惑う私に沢野先生はやさしく微笑んだ。
「安心して下さい。断っても処方を減らしたりしませんから。……だから医者でなく一人の男として、結婚を本気で考えて欲しいんです」
私は気を失いそうになるのを必死でこらえて、なんとか沢野先生の部屋を後にした。
頭の中が真っ白で何も考えられなかった。
途中で鈴木とすれ違ったのにも気が付かなかった。