MR(医薬情報担当者)だって恋します!
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香澄が来る前にシャワーだけかかった。
すぐそばの駅まで香澄を迎えに行く。一日家から出なかったら、午前中の太陽がやけに眩しく感じられた。
「ごめんね~、病人なのに出てきてもらって」
「こちらこそ、来てもらってありがとう。部屋汚いけど」
オートロックの鍵を開けて、3階の部屋に案内する。
「おじゃまします」
香澄は靴を綺麗にそろえて部屋に入った。
「どうぞ~」
「雑炊作ってきたんだけど、食べれる?」
「え、わざわざありがとう」
香澄はタッパーに入った雑炊と、スイーツ入った紙袋を渡してくれた。
「プリンなら食べれるかなと思って」
「なんか気を遣わせちゃったね」
「いいのいいの」
私と香澄は丸い折りたたみテーブルを挟んで向かい側に座った。
「それで、何があったの?」
私はどこまで話していいか一瞬迷ったけれど、全てを話した。
「えーっと……」
香澄は何回か目を瞬いて、
「大変だったわね、理緒」
と私の肩を叩いた。
「うーん。個人的な話をするぐらいなら分かるけど、プロポーズ……。それも一度のキスで? そんな純なドクターいるんだ?」
香澄は呆れたように言う。
「とてもいい先生なの。MRを尊重してくれる、みんなにやさしい先生」
香澄は私の言葉に目を細めて、いたずらっ子のように笑った。
「私なら、そのドクターとの結婚の方とるかも。大事にしてくれそうじゃない?」
「それは……そう思う」
私も素直に頷く。
「でも、理緒はそれをしない」
「鈴木とはほんとは恋人になりたいわけじゃないんだけどな。二人とも勝手だよ」
「うーん。勝手、ねえ。まあ、タイミングが一緒になったのは同情する。でも、どっちみち二人ともいつかは理緒に告ったんじゃない? 理緒も橘先生に恋に落ちた。恋ってそんなものでしょ。プロポーズはいきなりするものなのかは私には分からないけど」
それを言われると私は何も言えなかった。
「まあ、鈴木君とは友達として仲良かったんだし、恋人もその延長だと考えればなんとかなるよ」
「そうだといいんだけれど」
と言った私のお腹がぐうと鳴った。
「雑炊食べたら?」
「そうする」