MR(医薬情報担当者)だって恋します!
「……そうですか。こちらこそ悪すみませんでした。貴女を悩ませてしまい。その、キスまでしてしまい……。どうか許してください。実は、僕は外来から徐々に離れようと思っているんですよ。研究棟の方で研究をしたいなと以前から思っていまして。これからは会う機会も減るかもしれません」
「そう、なのですか?」
私は沢野先生となかなか会えなくなるという事実に軽いショックをうけた。でも、考えてみたら、振られた相手と普通に接するのは辛いものだ。沢野先生のためにはそちらの方がいいのかもしれない。
私の表情を見て沢野先生は、
「ああ、もちろんこの部屋にいることもありますので、遠慮なく声はかけて下さって構いませんからね」
と微笑んだ。私はそっと息を吐いた。
「先生、こんなことをお頼みするのは酷いかもしれません。ですが、これからも以前のように接して頂けないでしょうか?」
沢野先生は温かな光を湛えた目で私を見つめた。
「鈴木さんは心配性ですね。大丈夫ですよ。薬の話も音楽の話もしましょう。ただ、僕の気持ち自体が消えるまでは少し時間がかかるかもしれません。それは許して下さいね」
沢野先生はどこまでもやさしい。
私はなんだか涙が溜まってきたのを悟られないように必死で上を向いた。
「また来てくださいね」
沢野先生の言葉に私は深々とお辞儀をして部屋を出た。
私、また失敗したのかな。
ううん。今回はこれで良かったんだ。私は鈴木を選んだ。もう後戻りはできない。