MR(医薬情報担当者)だって恋します!

 鈴木の指が顎にかかり、熱い息が唇にかかったかと思ったら、私の唇は塞がれていた。柔らかくて温かい鈴木の唇。私は自分の頬が熱を持つのが分かった。一秒が何分にも感じられた。鈴木は一度唇を離して、もう一度しようとした。私はそこで待ったをかけた。

「きょ、今日はここまで」

 鈴木は残念そうだったけれど、私から離れた。お互い前を向く。誰もいなくてよかった。

「なんか、恥ずかしい」
「そう、だな」
「あの、ね。私、彼女になるってことが初めてだから分からなくて」

 私の言葉に鈴木は、

「あ~、そうだよなあ」

 とベンチに手をついて上を向いて言った。

「その……。鈴木は私と、その、こういうことをしたいから彼氏になりたかったの?」

 自分で言うのも恥ずかしく、私は俯いて言った。

「……正直、それもある。でも、女として一番大切にしたくて。俺が、鈴木を守りたくて。他の奴じゃなくて、俺が。好きだから」

 鈴木の言葉に私は心臓がきゅっと苦しくなるのを感じた。

「わ、私はまだ、その、鈴木のこと、男として好きかは分からないけど、でも、その言葉は嬉しい……」

 鈴木は私の髪をわしゃわしゃと撫でた。

「うん。今はそれでもいいや。少しずつ、ね」

 鈴木はベンチから立つと大きく伸びをした。その鈴木の先に月が見えた。綺麗だなと思った。
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