MR(医薬情報担当者)だって恋します!
「今、何時かな?」
私はスマートフォンを見て、
「22時14分」
と答える。
「そか。じゃあ、帰ろうかな」
「うん」
鈴木は来た時よりずいぶんすっきりした顔になっていた。
「来てよかった」
「みたいだね。表情で分かる」
私の言葉に鈴木は笑って、次の瞬間、
「あ~、でも、俺が初彼なのに、初チューは沢野先生なんだよな。悔しい!」
と言った。私は目をうろうろさせる。
「カ、カウントは今日からする、よ」
そう言う自分がいた。
「そ、そっか」
二人で照れて互いにそっぽを向く。くすぐったいような変な気持ち。
私、鈴木を意識してる? 恥ずかしい。
私は言おうか迷ったが、言葉を紡ぐ。
「それ、に」
「ん?」
「……まあ、沢野先生の前に鈴木にされたんだ、本当は」
私はごにょごにょと小さく言った。
「へ?」
「あの、鈴木が酔っ払った夜」
「え?! ま、まじで? 俺、そんなことしたの?!」
「誰かさんは酔ったら誰にでもキスするみたいね」
と嫌味っぽく言ってやる。
「ば、馬鹿! そのころからもう鈴木が気になってたから……。だからしちゃったんだろ! たぶん」
「たぶんって」
「だって記憶ないからさ。でも、俺ナイス!」
鈴木って単純だ。そう思うとつい笑ってしまった。
「何笑ってんだよ!」
と鈴木が私の頭を小突いてくる。
「べ~つに~」
私たちは駅前で手を振って別れた。