MR(医薬情報担当者)だって恋します!
各階を回りながら夏目さんを探して階段を上っていると、
「ねえ。今度の日曜一緒に出かけない?」
と女性の声がした。
夏目さんの声ではないから、女性のドクターだろう。
「困ります。俺彼女いるんで」
断る声に私の耳が反応した。鈴木の声だった。
どこから聞こえるのだろう。見ない方がいいと思うのに探してしまう。
上からのような気がする。
私はよせばいいのに、そっと階段を上がった。
そして見てしまった。腕を無理やり組むようにして糸田先生が鈴木に言い寄っているのを。
鈴木は明らかに困った顔で腕を振りほどこうとしていた。その鈴木と目が合う。
「!」
鈴木の目に焦りが浮かんで、私に何か言おうとする。その前に糸田先生が口を開いた。
「あ、千薬さん。やだ、見られちゃった」
「お疲れ様です」
「鈴木君、なかなか心を開いてくれないんだ。彼女って千薬さんじゃないよね?」
私はきゅっと唇を噛んだ。
「……違います」
「よね~! 彼女がいるなんて嘘なんじゃないの? ねえ、一度ぐらいいいじゃない」
私が居ようが居まいが関係ないらしい。糸田先生は鈴木に猛アプローチをしている。私はやっぱり見るんじゃなかったと思って、
「私、用事があるので失礼します」
と二人の後ろを通って階段を上った。