MR(医薬情報担当者)だって恋します!
胸の奥がちりちりする。鈴木がモテるのは分かっていること。いちいち嫌な気分になっても仕方ない。そう。仕方ないのに。
糸田先生はドクターになって一年目のまだ若い女医だ。肩まである長い髪はふわふわで、童顔で可愛らしい守ってあげたくなるような外見だけれど、性格は意外にサバサバしている感じ。
鈴木は困ってはいた。でもどうなのかな。あんなに可愛いドクターに言い寄られたら悪い気はしないと思う。腕だって組まれちゃって。
「おう、鈴木。体調悪いのか?」
黒いもやもやしたものが胸に広がっていたとき、橘先生に声をかけられた。
「まあ、部屋に来い」
私は橘先生の部屋に入らせてもらった。
「なんだ、彼氏と上手くいってないのか?」
「え? そういうわけではない、です」
「そうか。ならなんでそんな青ざめた顔してんだ?」
橘先生が煙草の箱から一本取り出して火をつける。
「先生。好きな人がモテるって先生ならどう思いますか?」
「ああ? モテないよりモテた方が俺は嬉しいがな」
「先生はヤキモチ妬かないんですか?」
「いいや」
橘先生は煙草の煙をくゆらせる。私はその煙をじっと見つめた。
「私、彼氏ができたの初めてですが、こんなに自分が嫉妬深いなんて思いませんでした」
「ヤキモチ妬かせるほうも悪いとは思うがな」
「いえ、悪いのは私です。こんな嫌な自分……」
「おい、泣くなよ?」
「だ、大丈夫です」
「恋人ができれば鈴木の低い自己肯定感も少しは上がると思ったんだが、そうでもないようだな。もっと彼に大切に、優しくしてもらえ」
「……はい」
私は橘先生の部屋を出た。