MR(医薬情報担当者)だって恋します!
自己肯定感が低い自覚はある。
あれだけ母と兄に駄目な子だと言われ続けたのだ。自分に自信が持てない。鈴木は私を選んでくれたのだからと思っても、少しのことで心が揺らぐ。
自分と糸田先生を比較すると、どうして鈴木が私を選んだのか分からなくなる。
容姿は確実に負けてる。
糸田先生だけではない。鈴木はモテるのに、彼女もいたのに、なぜ私を好きになったのだろう。
考えだすと悪いほうにばかり思考が落ちていく。
エレベーターホールでぼんやり床を見ていると、
「鈴木」
と声をかけられた。
「誤解すんなよ?」
「何を?」
鈴木の言葉につっけんどんに返してしまう。
可愛くないな、こういうところ。自分でも分かっているけど、上手く対応できない。
鈴木は傷ついた顔を一瞬して、
「……夜電話する」
と小声で耳打ちして医局の方へ歩いて行った。
私は自己嫌悪でいっぱいになった。
営業だけは普通にしなくては。
私は階段を降りて循環器内科の医局へ入った。
珍しく准教授の今本先生がいて、話しかけられた。
「君はK大を出てるんだってね? 凄いな」
大学の話はされたくない。どうしても兄のことがちらつく。兄に比べれば私の大学なんて。しかも浪人して入ったのだし。
「MRじゃなくて他の職業につこうとは思わなかったの?」
どうして今日に限ってこうも傷をえぐられるのだろう。
「私は身体が強い方ではなくて、小さなころから薬にお世話になってきたんです。それで……」
「薬学部に入れば良かったのに」
「そこまでは頭が良くなかったんですよ~」
無理矢理笑顔を作る。私、ちゃんと笑えてるだろうか。
「先生、最近エクサシールはどうですか?」
「ん? ああ。処方してるよ」
嘘だと分かる。今本先生が贔屓にしている所は確か……。
「これからもよろしくお願いしますね」
私はそれだけ言うと医局を出た。