MR(医薬情報担当者)だって恋します!
営業を終える頃には身も心もくたくたになって、私は帰りに買った菓子パンと缶チューハイをテーブルに置いて、シャワーだけ浴びた。
バスタオルで頭を拭いているとスマートフォンが鳴った。
鈴木の名前が表示されている。
私は両手が塞がっているのを理由に無視した。
鈴木は何も悪いことをしていないし、私が怒る理由はない。ただ、私が勝手にヤキモチを妬いてるだけだ。こんなもやもやした気持ちで話してもいいことない。
その後も二度着信があったが、私は取る気になれず、放置した。チューハイを飲みながら菓子パンを食べる。女としてどうかと思いつつ、酒に癒しを求める自分がいた。
と。
インターホンのチャイムが鳴った。カメラには鈴木が映っていた。
「開けないと騒ぐよ?」
鈴木の言葉に私は仕方なく鍵を開けた。
「どうして電話に出ないの?」
鈴木は少し怒った声で言った。
「……」
私は鈴木の方を見られずに、ただ黙ってチューハイに手を伸ばす。そんな私の手から鈴木はやさしくチューハイを取ってテーブルの端に置いた。
「ほら、こっち向けよ」
鈴木は一度ため息をついて、私の頬を両手で挟んで自分の方に向けた。
「俺は糸田先生のこと何もやましいことないよ」
「分かってる。分かってるけど……」
ようやく私は言葉を吐いた。
「けど?」
「嫌な気持ちになる自分がいるの」
鈴木は私を抱きしめた。
「ヤキモチ妬いてんだな? 馬鹿だな」
「馬鹿だもん」
「いいか、鈴木。俺には他の選択肢はないんだよ。鈴木しか見えてないから。……理緒が、理緒だけが好きなんだよ」
私の目から我慢していた涙が溢れる。
「何で? 私そんなに魅力ない」
「誰がそんなこと言ったの? 前話してたお母さんとお兄さん?」
鈴木が私の目を覗き込む。その目は少し悲しげに見えた。
「俺は理緒のお母さんでもお兄さんでもないよ。理緒、俺を見てくれよ」
「鈴木を……」
「そう。俺を。俺だけを」
私は鈴木の目を見返した。鈴木の目には私だけが映っていた。
鈴木の言葉は嬉しい。でも、まだ私の不安は取り除けない。
私は鈴木の首に手を回し、その唇に唇を重ねた。
そして、
「鈴木、私を抱いて」
と言った。