MR(医薬情報担当者)だって恋します!

 土曜日。
 鈴木と買った明るいベージュのスーツを着て私は指定されたホテルに向かった。もう少し華やかな格好が良かったかもしれないが、手持ちの服が少ない私は自前では明るい色のそのスーツを選んだ。
 ホテルのラウンジにいる沢野先生を見つけて駆け寄る。

「すみません。スーツしか持ってなくて、この格好になりました」
「いいんですよ、どんな格好だって」

 沢野先生の隣に座り、紅茶を注文する。

「あまり緊張しないで、ありのままの鈴木さんでいいですから」

 沢野先生は言ったけれど、逆に困ってしまう。ありのままの自分って何だろう?

「あ、来ました」

 沢野先生が言って立ち上がったので、私も立った。
 どう思われようと関係ないのに胸がドキドキしてくる。
 いかにも医者の両親といった感じの二人だ。
 沢野先生の父親は紺のスーツ。母親は薄いピンクに花柄の着物だった。
 沢野先生は父親似かな。眼鏡が似合うダンディな感じ。若い時はモテたんじゃないかな。
母親は品の良さが感じられる和風美人だった。

「僕がお付き合いをしている方です。彼女は鈴木理緒さんと言います」

 沢野先生の言葉に私は沢野先生の両親に深くお辞儀をした。

「初めまして。鈴木理緒です。よろしくお願いいたします」
「あらあら可愛らしいお嬢さんだこと」

 沢野先生の母親が口に手をあてて笑った。二人が腰かけたので、私と沢野先生も座った。

「おいくつですか?」

 沢野先生の父親の質問に、

「今年で25になりました」

 と答える。

「まあ、ほんとにお若い。ご職業は何をなさっているのかしら?」

 私は正直に答えていいか分からず、困って沢野先生を見た。

「彼女は千薬製薬のMRをしています」

 沢野先生が答えると、沢野先生の両親は顔を見合わせた。

「MR……」

 なんとも言えない顔をされて、私は下を向いた。そんな私の背に沢野先生が優しく触れた。私は慌てて前を向く。

「そ、それで、このお嬢さんと結婚する気なのかね?」

 沢野先生のお父様が沢野先生に尋ねた。
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