MR(医薬情報担当者)だって恋します!
「まだそういう話はでていません。結婚出来たらいいなと僕は思いますけれど」
沢野先生の言葉に両親は黙った。私はただその様子を見守るだけだ。
「その~、彼女は若すぎるのではないかな? 言いにくいが修治は二度目の結婚だ。でもお嬢さんは初婚だろう? うまくいくだろうか」
言いにくそうに沢野先生のお父様が言う。沢野先生はそれに対し、
「それは僕たちの問題で、お父さんの心配することではありませんよ」
と答えた。
「とにかく、僕は今は見合いをしたいとは思えません。彼女がいるのですから」
再び沢野先生の両親は黙った。
「あ、それから、僕たちが付き合っているのは秘密なんです。彼女は僕の大学のMRでもありますから。なので、くれぐれも他の人に言わないようにしてください」
「それは、まあ……」
沢野先生のお母様は頷いた。たぶん言わないだろう。MRが恋人だとは。
沢野先生の両親は苦渋に満ちた顔をしていて、私はなんだか申し訳なく思った。偽りの恋人なのにこんなに悩ませてしまっている。
「分かった。えっと、理緒さんと言ったかな? くれぐれも修治のことを頼みます」
二人に頭を下げられ、私はそれ以上に深くお辞儀をした。
沢野先生の両親がホテルを出ていくと、沢野先生はふぅと小さなため息をこぼした。
先生は少し疲れた顔をしていた。
「これで良かったのでしょうか? 私はなんだか申し訳ないです」
私の言葉に、
「すべて僕の仕組んだことなので、鈴木さんは何も悪いことはしていません。大丈夫です。これで見合い話が減るなら僕にとってはありがたいことです」
と沢野先生は微笑んだ。私は複雑な気持ちになった。見合い話が来なくなったら、沢野先生はいつ結婚できるのだろう。