MR(医薬情報担当者)だって恋します!

沢野先生のマンション

 沢野先生のマンションは12階建てで、沢野先生の部屋はその12階だった。

「どうぞ」

 案内されて入ると、立派な玄関があり、廊下の幅も広かった。
 私は恐縮しながら靴をそろえる。

「お邪魔します」

 先に入った沢野先生が廊下の奥の扉を開けると、急に視界が明るくなった。案内されたのはリビングで、大きな窓から太陽の光が降り注いでいた。壁は白。家具も白に統一されていて、明るい印象だ。
 テレビが大きい。ソファーも革でできたしっかりしたもの。
 リビングと続きになっている部屋にグランドピアノが置いてある。ピアノも高価なもののようだ。

「どうしました?」
「い、いえ。沢野先生らしい部屋ですね」
「僕らしいですか?」

 沢野先生は不思議そうな顔をしている。

「どうぞ、ピアノ、弾いてみてください」

 私はピアノの椅子に腰かける。こんなに大きなグランドピアノを弾くのは初めてだ。緊張で手に汗をかいてしまう。

「最近弾いていないので、弾けないかもしれません」

 言い訳をしてから、ドビュッシーの『二つのアラベスク』の一番を弾いた。小学生の六年生の時に発表会で弾いた曲だ。今の私にはこのレベルでもノーミスは難しい。ところどころ音が抜けたが、何とか弾き終えた。ピアノがいいせいか、いい音がする。
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