MR(医薬情報担当者)だって恋します!


 私と沢野先生は、マンションを出て、BMWの沢野先生の車に乗って比較的庶民的なイタリアンの店に入った。
 日替わりランチを頼む。

「ちょっと不思議な感じです。こういう店に沢野先生が入るって」
「僕の趣味の一つは貯金なんだよ。だから、安い店にも行くし、普段は自炊してるよ」

 私は驚いた。
 頼んだ日替わりランチが運ばれてきて、私たちは食事をしながらおしゃべりを続ける。

「貯金……。沢野先生は何か買いたいものがあるのですか?」
「買いたいものというより、旅行が好きなので、そのためかな。それから、大学病院以外で先生と呼ぶのはやめて欲しいな」
「あ。えーっと、では沢野さんで」

 沢野先生は嬉しそうに目を細めた。

「あの……沢野さん」
「うん?」
「その……お見合いの話なんですが、断って本当に良かったのでしょうか?」
「ああ、それは、まあ、鈴木さんとの未来は無くなってしまったけど、急いではいないから。前、話したと思うけど、研究の方に本腰をいれたいんだ。お嫁さん候補は、研究が一段落ついてから自分で探したいし、いいんだよ」
「そうならいいのですが……」
「ありがとう。心配してくれたんだね? 正直僕はヒエラルキーに属するのが苦手で、大学は窮屈で仕方ない。しがらみが多くてね。だから鈴木さんが友人として付き合ってくれると少し新しい風が吹いていいと思うんだよ」

 沢野先生はにっこり笑った。

「これからよろしく」

 沢野先生に手を差し出され私はその手を握った。
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