MR(医薬情報担当者)だって恋します!
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一つに縛った髪をぐいと引かれて私は後ろを振り返った。もう慣れっこになっている。
「すーずーきー君! 引っ張るなって何回言えば分かるの?」
「引っ張ってって言ってるような髪なんだもんな。それから君付けいらないって言ってるじゃん」
「もう、普通に声かけてよね」
ドクター専用駐車場には営業職のMRは停められないので、一般駐車場に車を停めるのだが、そこから病院までは歩いて十分ほどかかる。ちょうど病院まで歩いている時だった。
「なに? 人のことジロジロ見て」
「身長159センチ。Eカップ」
鈴木君の言葉に私は顔が熱くなるのを感じた。目を白黒させて、
「な! 何、なんでそんなこと鈴木君が知ってるの?」
と抗議する。
「本当なんだ? 高田先生に話した?」
高田先生。胃腸内科のドクターで、ドクターの中では気さくな方でよく喋りかけてくる。昨日も医局に二人の時に話しかけられ、私の身長と胸のサイズを聞いてこられた。聞いてどうするんだろうと呆れながらも正直に答えてしまったのだ。
「皆に広まってるよ? 鈴木、意外といい体だってさ」
「高田先生! 酷い! 鈴木君もさ、そんな変なこと覚えないで薬の勉強しなさいよ!」
私は鈴木君の視線から体を隠すようにして言った。
「女のMRって大変だね。自分の体のサイズまで言わなきゃいけないの?」
「そんなことないけどっ」
私は自分の軽率さを恨んだ。あまりドクターを信用しすぎてはならない。この時私はそう強く思ったのだが。