MR(医薬情報担当者)だって恋します!
沢野先生の部屋は片付いていて、両隣に本棚、そして中央に机、といたってシンプルだった。
机を挟んで向かいに座り、会社から支給されている資料集を使って私は宣伝を試みた。こんな風に資料を広げてじっくり宣伝する機会はなかなかない。
沢野先生は興味深そうに私の話を聞いていた。
「なるほど、エビデンスがしっかりある方が安心は安心だよね」
沢野先生が顎を触りながらそう言う。
「はい。他の同系統の薬だからと言って同じ結果が出るとは限りませんので」
「うんうん」
頷く沢野先生に私は訊きたくなった。沢野先生だったら答えてくれるかもしれない。
循環器内科は高血圧薬がよく出る科だ。だが、エクサシールはその中ではやや出遅れている感があった。
「なぜうちの薬はあまり出ないのでしょうか?」
私の問いに沢野先生は目を大きく開いた。
「えーと、昨日、四人出しましたよ?」
「ありがとうございます」
「まあ、でも、効きがゆっくりというのはあるかもしれないね」
エクサシールを処方されない理由の一つがそれだった。
「でも効きが早い薬は飲まなくなると急に血圧が上がります」
「うん。そうだね」
沢野先生は困ったように頭をかいた。私はそんな沢野先生をじっと見つめた。沢野先生はふぅと息を吐いた。