MR(医薬情報担当者)だって恋します!
沢野先生の呟きに、私と司は沢野先生の見ている方を見た。
グランドホテルから出てきた夏目さんの隣にいたのは。
「谷口先生……」
三人の間に一瞬沈黙が訪れた。
「谷口先生、奥さんいるよな」
「不倫、ですか……。まずいものを見てしまいましたね。いや、でも、何か事情があるのかもしれませんし、決めつけてはいけませんよね」
「どう考えても、休日こんなホテルから出てくるのはおかしいと思うけどね、俺は」
私は何も言えなかった。橘先生を好きになった時に夏目さんは反対していた。その夏目さんがどうして?
「とにかく僕は帰ります。ごめんね、鈴木君。二人きりの時間を少し拝借して」
「いえ、いいです」
「沢野先生、ありがとうございました」
私が立って頭を下げると、
「沢野さん、でしょ? じゃあね」
と笑って沢野先生は行ってしまった。
「沢野先生って、本当に理緒が好きなんだな」
「え?」
「普通、ここまでしないよ。……俺、負けたくない。理緒が不安にならないよう努力する」
司は私の手を握って言った。
「ありがとう。私も司を信じるよう努力する」
私たちは見つめ合って笑った。