MR(医薬情報担当者)だって恋します!
「ミスド行きたいんだろ?」
「うん」
「じゃあ、ドーナツ買って帰ろう」
「うん。今度は私のうちでもいいよ?」
「じゃあ、ドーナツとハーブティー? 合うのかな?」
「嫌なら紅茶でもいいよ?」
「そうしよう」
「さて……」
部屋について紅茶を入れ、二人で座ると司が切り出した。
「何?」
「何か不安になる出来事があったんじゃないの? またお兄さんから電話きた?」
私は紅茶の入ったマグカップを両手で持ったまま頷いた。
「電話で、私は振られるって言われた」
司は私の髪を撫でて、目を覗き込む。
「それはお兄さんの意見で、俺の心じゃないよな?」
「うん……」
「でも沢野先生も言ってたけど、理緒は自己評価が低いから不安になる、と」
「自分では分からないけど、橘先生にも自己肯定感が低いって言われたことある。橘先生に言われたんだよね。結婚しててもお互い不安だって。でも、好きなら相手を信頼しろって」
鈴木はうんうんと頷く。
「橘先生、分かってるなあ。って、橘先生ともそんな話してるの?」
「うん」
「俺も不安だよ? 橘先生は理緒の前の好きな人だから、そんな先生と理緒はまだ深い話をしてるんだと思うと」
司の本音を聞いて、私は申し訳なくなった。
「ごめん」
「いや、謝ることじゃないよ。俺はできれば理緒を束縛したくないから、自分の不安と戦うだけだ」
「不安と戦う……」
私は反すうするように言った。
「そう」
「司は強いね」
「強くなんかないよ。でも、俺は理緒を俺の都合で変えたくないんだ。そのままの理緒が好きだから」
「そのままの私? ……私、今のままでもいいの?」
「ダメなの? 俺は今の理緒を好きになったんだけど。お兄さんが理緒に求めてるレベルは高いんだろうけど、俺はそんなの求めてない。今の理緒が好きなんだよ。それにしても、理緒のお兄さんて、実はシスコンなんじゃないの? わざわざ理緒をけなすために電話してきて、それで自分のストレス解消? 迷惑な話だな」
「うん。ほんとね」
私はかすかに笑った。