MR(医薬情報担当者)だって恋します!

谷口先生という人

 夏目さんのことを司に言うのは躊躇われた。司もホテルから出てくる夏目さんと谷口先生を見たとはいえ、夏目さんのプライバシーのことだし、秘密とも言われたから。
 でも黙っているというのは思ったよりも苦しいもののようだ。心の奥にしこりのように夏目さんのことが居座っている。
 私は夏目さんのために何ができるかを日々考えるようになった。


「理緒、最近また悩んでないか?」

 鋭い司は尋ねてきた。

「うん? 大丈夫だよ。ちょっと疲れているのはあるけど」
「だったらちゃんと寝かせてやらなきゃダメかな?」
「もう」


 夏目さんの話を聞いてから腎臓内科の医局に行くのが苦痛になっている。私には優しく接してくれる谷口先生。でも、下心があるのだろうかと疑ってしまう。夏目さんを出入り禁止にしたのに、谷口先生の態度が以前と変わらないことにも私は怒りを覚えていた。
 悔しい。これでは夏目さんだけが泣き寝入りだ。


「鈴木さん」

 谷口先生に名前を呼ばれてはっとして思考を中断させる。

「はい」
「最近おとなしいけど大丈夫? 疲れているのかな?」

 駄目だ。ふつふつと怒りがこみあげてくる。誰のせいでこんな思いをしてると思っているのだろう。

「あの、谷口先生。ちょっとお話があるのですが、いいですか?」

 気が付いたら口に出していた。

「ここじゃダメなことかい?」
「はい。先生のお部屋での方がいいのですが……」
「? じゃあ私の部屋に行こう」
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