MR(医薬情報担当者)だって恋します!
「どこにいたの? 探してたんだよ?」
「あ、沢野先生の部屋で営業をしてました」
「沢野先生? そうだったんだね。その話を下のカフェで聞こうか」
私たちは病院の一階に入っている小さなカフェに行くと、私はココアを今野さんはブラックコーヒーを頼んだ。
私は沢野先生との話をかいつまんでした。自分の悩みはなんとなく伏せてしまった。本当は今野さんに相談できればいいのだろうけれど。
「沢野先生に時間取ってもらえてよかった。なかなかないよ? 会社で習ったような営業ができることって。でも、まあ、沢野先生はどのMRにも優しいから、処方もまんべんなくしているのだろうね」
今野さんは言ってコーヒーを一口飲んだ。
「循環器内科はエクサシールの自主研究が入ってないからね。どうにか提案をして入れてもらえればまた処方も増えるかもしれないけれど……」
「でも、シルビルナは呼吸器内科で自主研究入ってますが、いまいち患者さんがとれていません」
「そうなんだよね。喘息患者が竹部先生と塩屋先生に多いのは分かっても、あの二人がなかなか攻略できなくてね。話はするんだけれど、自主研究の話を振るとかわされる」
私もその二人のドクターは苦手だ。特に竹部先生は私を露骨に嫌っているのがわかる。塩屋先生は時々声をかけると応じてくれるが、薬の話になるとふいと行ってしまう。
私はココアの半分入ったカップをぐるりと回した。そして残りを飲み干す。
「でも、患者さんがある程度集まらないと研究になりませんものね。私も頑張って二人に呼び掛けてみます」
「期待してるよ」
今野さんもコーヒーを飲み干して、「出ようか」と席を立った。
「もうそろそろ12時になる。僕は支店に帰っていようかと思うけれど、一人で大丈夫かい?」
「あ、はい。もう営業するわけではないので」
「わかった。じっくり診てもらって」
「……はい」