MR(医薬情報担当者)だって恋します!

***


 診察室の前に行き、受付で事情を説明すると、橘先生から聞いているのか、

「こちらの空欄に書いて、診察室の前でお待ちください」

 とすんなり言われた。住所や症状を書いて、受付に渡す。無駄に心臓がどきどきしてきた。

「鈴木さん、どうぞ~」

 看護師に呼ばれ、私の緊張は頂点に達した。
 カーテンをくぐると橘先生がどっかりと座っていた。

「はい、鈴木さん。なんだ、緊張してるのか?」
「す、少し」
「今は患者だから、緊張しなくていい。はい、胸の音聞くからジャケットだけ脱いで」

 ジャケットだけでいいのか、と私はちょっと安堵した。着ている長そでシャツの首元から聴診器を入れられる。聴診器を当てられるとひやっとした。早鐘を打っている心臓の音を聞かれるのはとても恥ずかしい。

「はい。大きく息を吸って。吐いて。喘鳴はしないから喘息じゃないな。咳は二週間以上か。レントゲンを撮ろう。レントゲン室教えてあげて」

 橘先生は横にいた看護師にそう言って、

「レントゲン写真見てから薬考えよう」

 と私に向き直って言った。私は看護師さんに教えてもらったレントゲン室に行き、レントゲンを撮って戻ってきた。

「う~ん、若干白いな。肺炎になりかけだな。あんまり出したくないが、抗生剤も出すな。まあ、無理をしないことだな」
「ありがとうございました」
「喘息じゃなくて良かったな。それともなんだ、喘息だったら、シルビルナ飲むか?」

 橘先生が私が出ていこうとすると声をかけてきた。

「喘息だったら、出していただきたいです! 私はシルビルナ、信頼してるので。知らない薬を飲むより全然いいです!」

 私の言葉に、橘先生は豪快に笑って、

「そうかそうか。わかった。お大事にな」

 と言ったのだった。

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