MR(医薬情報担当者)だって恋します!

***


「司は夏目さんのこと谷口先生から直接聞いたことある?」
「うん。一人のときじゃなくて、何人かMRがいたときにね。反吐が出そうになったよ。谷口先生は困ったように笑いながら自分が被害者というように話してた」

 司の部屋で私が尋ねると司はそう答えて嫌悪感を隠さなかった。

「司、そのとき今のような顔してなかったよね? 大丈夫かな」
「一応、笑って聞き流したけどひきつってたかもね」

 私は司の手を握った。

「ねえ。私、このまま黙ってていいのかなって最近考えるようになった」
「理緒……」

 司は私を真剣な目で見つめ返してきた。

「大丈夫。司には迷惑かけないようにするから」
「それってどういう意味?」

 少し怒ったように司が言った。

「言葉通りだけど? 私のした行動には自分で責任を取るってこと。だから司は私がどんなことになっても私をかばったりしちゃだめだからね」
「それはそのとき俺が考えることだよ」

 司はやっぱり怒っているようだった。

「どうして怒ってるの? 司?」
「あまりにも他人行儀だから」
「そんなことないよ。司が好きだから、だから司にだけはこの件で迷惑かけたくないんだよ」

 司は私の手を強く握り返して、

「いいよ。俺には迷惑かけていいんだよ」

 と言った。私は最近涙腺が弱くなっているなと思った。

「……私、もう一度だけ谷口先生と交渉してみようかな」
「それはどうかなと俺は思う」

 司が間髪入れずに返してきた。

「谷口先生は交渉する気がないから夏目さんのことを悪く言ってるんだよ。理緒が言ってもきっともっと状況は悪化するだけだと思う。それでも言うというならかなりの覚悟がいるんじゃないか?」

 それは大学病院を離れる覚悟だろう。

「……そうだね……」

 私は溜息をついた。そんな私の手を司はもう一度握りしめた。

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