MR(医薬情報担当者)だって恋します!
悔しい気持ちのまま私はとにかく他の科のドクターへの営業に力を入れた。
「夏目ちゃんのこと悪く言ってるドクターいるらしいじゃん」
呼吸器内科の医局で塩屋先生に声をかけられた。枝豆をもぐもぐと食べながらまるっきり他人事のように言われ、私はこめかみを引きつらせる。
「いや、なんで鈴木が怒るよ? まあ、でも女のMRはそんな風に言われるの、可哀相だと思ってんだよ、俺は。俺的には夏目ちゃんのこと好きだし、大学から離れてほしくないからさ。MR個人攻撃して追い出そうとするのはどうかと思うわけよ」
塩屋先生の言葉に少し私は肩の力が抜けた。でも、なんとも反応できなかった。
「で、鈴木もターゲットにされてるとか? せっかくシルビルナ少しは出すようになったんだから辞めんなよ?」
医局には私と塩屋先生と竹部先生しかいなかった。竹部先生は黙ってパソコンに向かっているが、たぶん聞いているのだと思う。その背中は以前ほどは私を拒んでいない気がする。私は勇気づけられ、
「はい」
と頷いた。
「それじゃ、来週のエクサシールの説明会、ちゃんと出てくださいね」
「うーん。それはその日に決めるよ」
塩屋先生らしい。私は笑って医局を出た。