MR(医薬情報担当者)だって恋します!

対決と結末

 谷口先生とは階段ですれ違ったきり会っていない。
 腎臓内科での処方は、今野さんが頑張っているようでそこそこ回復してきている。他科でのエクサシールの処方は増えた。それは私に対する同情のせいもあるのだけれど、それでも処方が増えるならありがたい。


「最近夏目さんだけでなく、鈴木さんのことも谷口先生、悪く言ってるよ」

 他社MRに耳打ちされて、私はやっぱりと思った。

「そうですか」

 私は短く返事をする。

「実際どうなの? 鈴木さん、色目使ってるの?」

 面白がって訊いてくるMRもいて、私は、

「使ってるように見えますか?」 

 と尋ね返した。

「いや、僕はそうは思ってないよ?」
「どうだろ、少しは使ってるんじゃない?」

 こんな時、自分が女MRだからこんな風に扱われることにイラっとする。

「使って処方が取れるんでしょうか? 私はドクターはそんなに単純ではないと信じたいです」

 私の言葉に彼らは口を閉じた。

 
 彼らにとって私はライバルとさえ思われていないかもしれないけれど、中には誰でも蹴落そうと思っているMRもいる。私は今、その格好の餌食なのだろう。
 でもこんなことで凹んでいられない。
 私はこの日も目当てのドクターに薬の情報提供をしては階段の上り下りをして、ひたすら営業に勤しんだ。
 負けるわけにはいかない。

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