MR(医薬情報担当者)だって恋します!

***


 処方された薬を飲み切るころには私の咳は止まっていた。
 
「おう。咳止まったようだな。体調はどうだ?」

 エレベーターホールにいると橘先生が話しかけてきた。

「先生のおかげですっかりいいです。ありがとうございました!」
「そりゃよかった。……まあ、慣れない営業で無理してるんだろ。ほどほどにな」

 橘先生はそう言って、ファイルを持った手を挙げると自室に入っていった。
 
 私は。
 橘先生の言葉にうるっとして感動していた。気遣いの言葉がもらえるとは思ってなかったのだ。
 橘先生が聴診器を胸に当てていた時のことを思い出す。真剣な顔だった。ちゃんとドクターの顔だった。私は橘先生に診てもらって本当によかったと思った。

 私は自分の悪い癖をこの時すっかり忘れていた。

「何? 鼻赤いけど、どうしたの?」

 呼吸器内科の医局から出てきた鈴木が驚いたように私を見た。

「べ~つに。ちょっとごみが目に入っただけ」
「ふ~ん」

 鈴木は訝し気に私を見たままそう言ったけれど、それ以上は追及してこなかった。

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