MR(医薬情報担当者)だって恋します!


 そんな私の肩を優しく叩く手があった。

「馬鹿ね。私のためにここまでする必要なんてないのよ」

 声の主は夏目さんだった。

「谷口先生が不倫していたのは鈴木さんじゃないわ。私よ!」

 谷口先生の目が大きく開かれ、他社MRたちと他のドクターたちが驚いたように夏目さんと谷口先生を交互に見た。

「な、夏目さん……」

 私は夏目さんを見上げた。溜まっていた涙がまた溢れ落ちた。そんな私に夏目さんは手を差し伸べて私を立たせた。

「ごめんなさいね。貴女に土下座なんてさせてしまって。嘘までつかせて。私のエゴで鈴木さんを追い込んでしまった。私がもっと早く言うべきだったわ」
「な、何を言いだすんだ? 夏目さん。鈴木さんといい、人を馬鹿にするのもいい加減にしたまえ! は、はは。そんなこと誰も信じるわけないだろう! だいたい、証拠はあるのかね?」

 言葉とは裏腹に動揺した谷口先生の声。その場にいた全ての人が夏目さんを見た。

「証拠ならこのスマホにたくさん入っています。これ以上鈴木さんや沢野先生を貶めるなら、先生の奥さんにバラします」

 勝敗が決まった瞬間だった。
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