MR(医薬情報担当者)だって恋します!


 隙が多い。
 私は夏目さんから言われたことを心に止めて、顔を引き締めた。
 10階のエレベーターホールには誰もいなかった。腎臓内科のドクターたちに声をかけるために待つ。
 しばらくして谷口先生が医局から出てきた。

「お疲れ様です。千薬です」

 深くお辞儀をする。谷口先生がこちらを向いた。

「千薬さん、毎日感心だね。真面目なことはいいことだよ」

 谷口先生に話しかけられるのは初めてだった。

「ありがとうございます!」
「明日処方するかな。えっとエクサシールだっけね」

 谷口先生の言葉に私はまた深々と頭を下げた。

「ありがとうございます! よろしくお願いします!」

 大丈夫。私でもいないより役に立つ。自分に言い聞かせた。

 谷口先生は40半ばぐらいのドクターで、紳士的な印象のドクターだ。
 今野さんは難しいドクターだと言っていたが私にはまだそれがわかっていなかった。このときは。


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