MR(医薬情報担当者)だって恋します!


***



「おう。最近、体の調子はどうだ?」

 悶々としている毎日。
 通りかかった橘先生に言われたとき、私は思わず橘先生に救いの神を見たのだと思う。

「なんだ、そんな顔して。まあ、入れ」

 橘先生に自室に促され私は入った。

「どうした? 営業、きついのか?」 

 そう言った橘先生の目がとてもやさしく見えて、私の目から一筋の涙が落ちた。何の涙か自分でもわからなかった。いったん泣いてしまうともう止められなかった。私の目からはとめどなく涙が溢れ、橘先生はそんな私を困ったように見ていた。

「なんだ、何かあったのか?」
「い、いえ。ただ、自分は役に立っているのかわからなくなりまして……。会社で教わった宣伝はほとんどできないし、大学に来ていても薬の話もできない。それでいいのかと……」

 涙と一緒に言葉が出てくる。沢野先生に話したことと同じことだ。あの時沢野先生に言われたのに。私がいる意味はある、と。それなのに、その実感をなかなか得られない。

 橘先生は煙草に火をつけると、ゆっくりと煙を吐いた。

「先生、ここは禁煙では……」
「気にするな。俺は自室では吸っている」

 橘先生はそう言ってもう一度煙を吐いた。そして私にティッシュを差し出した。

「まあ、拭け」
「ありがとうございます」

 私は涙を渡されたティッシュで拭いて、鼻もかんだ。
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