MR(医薬情報担当者)だって恋します!
「鈴木? 何かあった?」
ついつい呼吸器内科のある4階のエレベーターホールにいてしまう私を現実に呼び戻したのは、鈴木の声だった。
「え? な、何も」
背の高い鈴木が私を見下ろしている。
「ふーん」
「なんか、私、おかしいかな?」
「考え事が増えてる感じ。心ここにあらず」
「そっか。気をつけないとね。夏目さんにも隙が多いって言われたんだった」
私の言葉に、
「あー、それはあるね」
と鈴木が返した。
「そ、そう?」
「うん。悩んでる時、顔に出てる。何悩んでんの?」
鈴木に橘先生のことは言えない。そこで、私は鈴木に質問することにした。
「鈴木は……自分の存在意義とか考えない? MRとして、役に立ってるかどうかとか」
鈴木は不思議そうな顔をした。
「存在意義? 小難しいこと考えてるんだな。仕事が全てじゃないと思ってるから、存在意義まで考えない」
鈴木の答えに、私は。
「え?」
動揺した。
「だから。役に立ってるか立ってないかで自分の存在意義を決めたりなんかしない」
もう一度言った鈴木に私は黙った。母の言葉が聞こえてくる。
『役立たずはいらないのよ』
ずっとそう言われてきた。
「鈴木? 大丈夫か?」
「え、あ、うん」
「鈴木さ、仕事に入れ込み過ぎじゃない? 家で何してる?」
最近、何してるかな。説明会の練習ばかりしてる気がする。
「おい、まさか仕事してないよな?」
私は返答につまった。
「じゃあ、質問変えるわ。好きなことは?」
好きなこと。最近できてないけど。
「ゲームは割と好き」
「マジ? 何好き?」
「ダーク◯ウルのシリーズとか、アサシン◯リードとか」
鈴木の顔が輝きだした。
「え、じゃあ、ブラッド◯ーンは知ってる?」
「あ、かなり好き」
「マジかよ?!」
鈴木の声がホールに響いて、鈴木は「あぶねー」と口を閉じた。
「なあ、一緒にやんね? 今度の土曜暇? ネット繋がってる? ダーク◯ウル3しよーぜ!」
「ああ、協力してプレイするの? そうだね、土曜日なら予定ないや」
「それじゃ、やる時メールするから」
「分かった」