MR(医薬情報担当者)だって恋します!
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この日も私は橘先生の部屋にいた。
相変わらず呼吸器内科の医局は居づらい。竹部先生は部屋がないので医局に机がある。外来が終わってからはずっとその席にいる時が多い。
竹部先生を攻略しなくては。そう思うものの、嫌われている自覚があるのでなかなか話しかけることができない。
塩屋先生はというと、意外にさっぱりした性格で、時々言葉は交わしている。だが、肝心の処方は出してくれない。
私は追い詰められていて、さらに、甚だしい勘違いをしていた。橘先生が言ったように私は一人で大学を回ってるわけではない。そして、新人の私が大学の処方を左右できるわけはない。それが分かっていなかった。
分からない私は頑なに自分一人で解決をしようとしていた。もっと自分を認められたかったのかもしれない。
「鈴木? どうした? おい、また泣いてるのか。鈴木は俺の部屋にくると泣いてばかりだが、俺にはどうしてやることもできない」
橘先生に言われて、私は涙を拭う。何故かは分からない。でも橘先生の部屋に入ると、ぷつりと何かが切れたように涙が出てしまう。気を張っていたのが緩んでしまう。
「……すみません」
「そんなにきついか? 最近眠れてるか?」
どきりとした。寝ていても営業してる夢を見て目が醒めることが増えていた。
黙ってしまった私に、
「今野さんは鈴木が悩んでることは知ってるのか?」
と橘先生は言った。私は今野さんの名前が出てきて焦った。
「そんな、悩んでるわけでは……」
「何かあるから泣くんだろう?」
私は再び黙った。何て言ったらいいのか分からなかった。