MR(医薬情報担当者)だって恋します!


「え?」
『悩んでるからあんな顔ばかりしてるんでしょ?』

 私は何から何までを話せばいいか困ってしばらく黙った。

『私には話しづらいこと? それなら無理には訊かないけど』

 私は覚悟を決めて話すことにした。

「夏目さんはMRをやっていて虚しくなる時はないですか? 私は自分がいても処方に繋がっていないのではとよく考えます。そればかりか処方してもらわなければいけないドクターに嫌われてしまって……」

 夏目さんはすぐには返事をしなかった。

『そう、ね……。MRは営業職の中でもちょっと異質かもしれないわね。営業しても手応えが掴みにくいというか……。特に大学はどの科で何がどれくらい出てるかが分かるわけではないしね。だから私も悩んだことはある。自分が何をしているのかが分からなくなって』
「夏目さんも……」

 私は不思議な安堵感を覚えた。

『でも、やるしかないのよ。この仕事を選んだ限り、やるしかない。疑問に思っても動くしかない。処方は自社からの研究費がその科にどれくらい入ってるかにも左右されるけど、MRが来ているかどうかにも左右されるはずだと思うしかない』
「以前、沢野先生に話したら、来ているから処方を出す気になる、みたいなことは言われました」

 夏目さんは一瞬黙った。その後、夏目さんの笑う声が電話から聞こえてきた。

『ドクターとそんな話をしてるの? 鈴木さんは凄いわね』
「変ですよね、私」

 夏目さんはまたくすりと笑った。

『まあ、それが鈴木さんらしさなのかもしれないわね。でも気をつけて。沢野先生は誠実な方だけど、弱みを見せるとつけ込むドクターもいるのよ。私たちは女。それを忘れないこと』
「そう、ですね。気をつけます。あの……」
 私は訊こうか訊くまいか迷う。
『まだ何かあるの?』
「あの……夏目さんはドクターを好きになったことはありますか?」

 言ってしまった。しばらく間があった。夏目さんは。
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