MR(医薬情報担当者)だって恋します!
夏目さんはクールだけど匂い立つような色気がある。ドクターからのセクハラも上手く受け流しているんだろうな。できるMR。私も数年後は夏目さんのようになれてるだろうか。
「鈴木さん。今日もちゃんと来てるねえ。もう仕事には慣れたかい?」
谷口先生がエレベーターの前にやってきた。
「ええっと、少しは慣れてきました。なかなか上手く宣伝はできませんが」
「大丈夫。鈴木さんがいることが宣伝になってるから」
谷口先生はそう言うと、軽く手を挙げエレベーターに乗って行った。私は俯いて笑みを噛み殺した。
私は谷口先生を見送ったあと、腎臓内科の医局でドクター方の話を聞いていた。
「エクサシールさあ、やっぱり効きが穏やかというか、血圧はあまり下げないよね」
突然話を振られて、私は緊張しながらも、
「下りが悪いときは、利尿剤を一緒に投与するか、利尿剤入りのエクサシールWを使ってみてください」
「ふーん。そんなのあったんだ? 分かった。そうしてみるよ」
薬の話を振られると嬉しい。
私はこの上向きの心のまま橘先生の所に行こうと腎臓内科の医局を出て階段を下りた。
橘先生の部屋の前に立つ。一度大きく息を吐いて、ノックをした。竹部先生がいても今度は逃げない、と自分に言い聞かせて。