MR(医薬情報担当者)だって恋します!
「鈴木。橘先生に怒られでもしたの?」
不意に鈴木から話しかけられて、私は橘先生の後ろ姿を追っていた目を鈴木に向けた。
「な、なんで? 怒られてないよ?」
「悲しそうな顔で橘先生見てるからさ」
鈴木は意外と鋭い。
「あ~、橘先生を見てたんじゃなくて、ちょっと考え事してたからかな」
苦しい言い訳をすると、鈴木は、
「まだ悩み解決できないの?」
と言ってきた。
「うん。でも誰でも悩みの一つ二つはあるでしょう」
「そう言われると、あるな、俺も」
鈴木は言って長い人差し指で頬をかいた。
「そういやさ、アンサンブルプラネタ? 聴いてみたよ。確かに綺麗だった。声だけであのクオリティは凄い。でも泣くのはどうよ?」
私は驚いて鈴木の顔を見返した。
「え? 本当に聴いてくれたの?」
「アマゾンミュージックにあったからな」
私は嬉しくなって鈴木の手を掴み、上下に振った。
「鈴木ってほんといいやつだね!」
鈴木は苦笑いをしながら手を離し、
「俺、思ったよ。鈴木かなり疲れてんだなって。その、本当に大丈夫か?」
と訊いてきた。
「心配してくれるの? 鈴木、本当はやさしいんだね!」
私はもう一度鈴木の手を握った。
鈴木はなんとも言えない顔をしている。
「ねえ 鈴木! 私と友達になってくれない?」
鈴木は「はあ?」と怪訝そうな声を上げた。
「友達ってそんな風に言ってなるもんじゃないだろ? それにもう俺たち友達じゃねーの?」
照れて言った鈴木に、私は手をさらに強く握った。
「ありがとう! 嬉しい!」
そうだ、と鈴木がバッグから一枚のCD‐ROMを取り出した。
「Queenの曲、個人的に好きなのまとめといた。暇な時に聴いてみな!」
「すごい、ありがとう! 聴いてみる!」
鈴木との時間は私に元気をくれる。今はそれがありがたかった。